彼の墓前で

1|墓参のルートを調べながら

4月の初旬に企画が立った、旧い友人の墓参り。
今日は、現地に着くまでの交通ルートを調べていました。

電車だとアクセスが悪く、迂回路になり時間もかかる。
となれば、車しかないのだけれど。

高速に乗るか、下道を多めに行くか。
分岐が少ない方が安心だとか、有料道路は高いよなとか、
そんなことを考えながら あれこれ思案。

で、結局は、
いちばん素直なルートで行くことに。

ひねくり回しても仕方ない。
見えたとおりに進めばいい。
人生って、案外そんなものかもしれないですね。


2|風のたより

この墓参では、昔の友人たちと会えるのでした。
若かりし頃の、懐かしい記憶。
ざっくばらんで、遠慮がなくて、気の置けない間柄。
「風のたより」の仲間たちに。

自分は第二世代(何がだ?)の加入なので、
少し年かさの先輩たちに、良くしていただいた記憶ばかりが残っていて、
彼らとの再会を想うと、自然と気持ちがあふれてきます。

実は当日は、僕の誕生日だったりもして。
石岡に移住して、間もない時期になるはずだし、
「移転後は事業を始める」と知らせたことも つい先日と、
今度の再会は、何やら節目のような気がしています。


3|佐藤さん と 土井さん

「風のたより」との出会いは、
大学卒業後に社会に出、数年を経ていたはずなので、
もう20年あまりも経ったのか、と。

あの頃の僕は、
正直、心のバランスがひどく悪くて。
こういっては何だけれど、
「死なないように生きるのが精いっぱい」でした。

突発的に仕事を辞めて、家の中に篭り数か月。
「このまま外に出なければ、きっと終わる」
「精神的に死んでしまう」

そう思って、ある日、えいやっと外に出た。

きっかけは、ふいに見つけた とある宿主、佐藤さんのブログ。
同じように(?)危機にあった友人に向け、
熱い言葉が、
魂の想いがひたすらに綴られていました。

この人のお宿に行ってみたい。
人と触れ合う中で、何かを掴みたい。

そう思ったから、
それはそれは、大層怖かったけれど、
己の殻を破って連絡を取ったのでした。

ヘルパーとして、週末に働かせてもらえるようになって、
毎回その宿へ通うときに、
車に乗せてくれたのが、件の土井さん。

明るくて、お茶目で、愛にあふれていて、
少し頑固で、お酒が好きで、へんてこりんで、
親父ギャグを連発しつつ 自己ツッコミも忘れない、
何やらとても魅力的な人でした。

お客様と一緒に山に登ったり、歌をうたったり、
温泉に入ったり、お茶会で歓談したり、
ヘルパー仲間としての想い出もたくさん、たくさん。

彼の温かさを分けてもらって、
人間らしさを少し取り戻して、
僕はまた、自分の世界に帰っていきながら、
またいつか、笑って再会できると、そう思っていた。

それなのに、ある日、突然逝ってしまった。
「嘘でしょう?」と思ったけれど、嘘ではなくて、
記憶ばかりがいつまでも鮮やかで、輝いていて、消えない。


4|報告したいこと

苦しいことも多かった。
遠回りもした。
自分のバランスの悪さと、何度も向き合った。

おかげさまで、何とか自分の足で立てるようになって。
人の役に立てる仕事を、これから、自分の手で作ろうとしている。

あの頃の僕に言うなら、こうなるだろう。

「何とかなるから、生きてごらん」
「周りを信じて、つながってごらん」

本当に、それだけを頼りに潜り抜けてきた。

何があった訳でもないのに、心の中が常に嵐で。
その嵐にのまれないために、心を常に凍らせていた。

傷付くこともない代わりに、平板な感情しか芽生えない。
自分が何をしたいのか、どう生きたいのかが分からない。
無味乾燥の中を生きる日々。

心を開くことは怖いことだし、
これまでも何度となく傷ついて、何度となく閉ざした。
僕の人生には、心の葛藤の遍歴がまざまざと記されている。

そして今、この限りないシーソーゲームを、
ようやく抜けたのかもしれない。
もう戻らなくて済みそうだ、と
そう思えるところまで来ている。

我ながら、よくやったと思うのだ。


5|生きたから100点

今日は、ふと、自分に点数をつけてみた。

100点満点。

完璧だからじゃない。
生き抜いたから。

あの日、車に乗せてもらった若者は、
ちゃんとここまで来ました。
今は心から笑っていますよと、

この春には彼の墓前で、そう報告してこようと思っている。

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