需要をどう切り出すか、という話

ちきりんさんを知ったきっかけは、同じ著者の『自分の意見で生きていこう』の紹介記事でした。
気になって調べてみると、理性的で主張がはっきりしていて、なんとも面白そうな方。
自分に足りないところを埋めてくれそうな気がしたのです。

そこで選んで手に取ったご著書の内の1冊が、この『マーケット感覚を身につけよう』でした。

勤め人として「とりあえず日々働いて、生きていられたらいい」と
自分を納得させながら過ごしてみても、
実際には、生活を回すだけで手一杯で、どこにも進めない感覚が付きまといます。

労働力として自分を切り売りする以外の道を、そろそろ本気で見つけないといけない。
そんなもどかしさを抱えていたとき、
タイトルを見て「これかも!」と思ったのを覚えています。

本書の中で特に印象に残っているのは、「需要」の捉え方でした。
需要と供給のバランスで、物やサービスの値段が決まる、という話自体は既知でしたが、
その「需要」をどう切り出すか、どの角度から見せるかという発想に、目を開かされる思いがしたのです。

たとえば、甲子園で活躍する高校球児を追う報道と、プロ野球のニュース。
同じ野球でも、そこで売り出されている価値はまったく違うと。
一方は、「若者たちの汗と涙、ひたむきさ、時の運にも支配される展開の理不尽さや感動ドラマ」を。
もう一方は、「感嘆するほど高いプレーの技術や、手に汗握るパフォーマンス」を。

また、著者自身の体験として語られる電気膝掛けのエピソードも印象的でした。

「家事で動き回る主婦には使いづらい」という声を受けて、
「長時間座り続ける受験生やプログラマーに最適」と表現を切り替えたことで
大ヒットにつながったとのこと。
「なるほど、頭ってこういうふうに使うんだ」と驚き感心しました。

この本が直接のきっかけと言い切れるわけではないですが、
読後、自分が長く続けてきた「心の探求」について、
「これも誰かの役に立つのではないか」と考えるようにはなりました。

心というものがどのように成り立ち、発現をして、
時々の発想や行動に結びついていくのか。
そうしたことについて、僕は人より体感が深く、勘が働くほうだと思っているので。

自分の違和感の正体がわからず、ただモヤモヤしている人。
具体的なアドバイスはいらないから、とにかく話を聞いてほしい人。
そういった「需要」に応答していく素養が、自分にはあるのかもしれない。

それは、「おいしいご飯が食べられる」ことだけではない、
僕の作るスペースが持ちうる機能のひとつであり、
今後、売り出していける価値のひとつとして考えられるのではないかと。

本書を通して、また一つ、自分自身の輪郭を捉え直すことができたように思うのです。

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